キミとボク。
制服のブラウスが暑い。
さすが夏と言うだけもあって、夏服とはいえ、暑さをしのぐにはまだまだ涼しい格好にしてほしいというのは世界共通だ。

憂鬱になり、今日何度目かの溜め息をつく。

片田舎のこんな小さな高校では転校というのはやはり珍しいらしい。
何の刺激もない毎日に突然降ってきたスパイスのようなものだろう。

HRが終わればすぐに机の周りが賑やかになった。

「星崎さんなぁ、綺麗な顔じゃけ、東京に彼氏とかおりよるんじゃろ?」
「東京ええなぁ。私も行ってみたいわぁ」

どこの国でも女子というものはやかましい。
髪を綺麗な茶色に染め上げ薄く化粧をし、スカートをギリギリまであげるのは東京だろうとどこだろうと変わらない。

そして甲高い笑い声。

郁弥も女子だが、あまりそういう類のものは好きではなかった。
かといってスカートを規定の長さにしたり、黒い地味なゴムを使ったりなどということはさすがにしない。

派手すぎなく、地味すぎない。
それが郁弥だった。

「彼氏なんて、いないよ」

女子にしては少しアルトぎみの声だった。

郁弥のつまらなさそうな様子を感じ取って、女子達は黙った。

しかし、見事に空気を読まない、呑気な声が。

「ほんま?星崎モテそうじゃき、ほんまは居ったんじゃろ。」

「…何言って、」

「遠慮せんでええけぇ、言うてみー」

前の席の翔が楽しげに言う。

一瞬は会話を途切れさせた女子達も、さっきの気まずさを忘れたように笑った。
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