蜜月 -love is blind-【BL】
 最初に伸したヤツらも加わって、殴るわ蹴るわ好き勝手ほざくわ、どいつもこいつもやることが同じでホント下らねぇ……。

 募る苛立ちに任せて、俺を抑える2人を無理矢理振り払う。

 気力だけで立ち上がった俺は、抑えていた1人に蹴りを食らわした。


「まともに喧嘩したことねーくせに、粋がるんじゃねーよ!」


 挑発に乗ってきた先輩のパンチをどうにかかわして、仕返しの拳をくれてやる。

 これで、全員やったよな……。

 上がる息を整えながら、無様に呻くソイツを見下ろす。

 間を開けて俺を睨む先輩らに視線をやると、俺を「アキナちゃん」呼ばわりしたヤツと目があった。


「……1年のクセに、生意気なんだよ」


 相変わらずの台詞に、返す言葉もない。

 俺が呆れて溜息を吐くと、それが余程気に入らなかったんだろう。

 不自然な動作で上着のポケットに手を突っ込んで、俺に歩み寄るなり、左頬にカッターの刃を突き付けてきた。

 そいつの思わぬ行動に、他の2年のヤツらが慌て出す。

 本気で斬り付けてくるとは思えなかった俺は、自分より背の高いソイツを思い切り睨み付けてやった。

 頬に突き付けられた刃は、真新しいのかも知れない。

 ピリリとする痛みを感じるが、引き下がる気にはなれなかった。
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