飛べない鳥
葵の言葉なんか、
もう耳に入ってこない。


心の中がぽっかりと穴が開いたようだ。



冷たい…悲しい…


『…俺は唯が好きだ。俺だってお前に唯を取られたくねぇよ』


喉を振り絞って、俺は葵に今の気持ちを素直に言った。



『…ライバルだな、俺たち』



『そうだな、負けねぇ』



負けねぇ…負けねぇ。


初めての恋なんだ。



初めて人を愛しいと思ったんだ。


この恋…必ず叶えてみせる。



葵は立ち上がり、出口の方へと体を向けた。



『唯が俺か遥斗、どっちか選ぶのは時間の問題だな。あっあといいこと教えてやるよ』



『……何だよ』



俺はいつもより鋭い冷めきった目で葵を睨んだ。


葵は白い歯を見せてこう言った。



『唯は運命の人を信じている。今もだ。それは、きっとこの…俺だ』



『…っ…』



葵は俺の前から去って言った。
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