星の唄


「うん。頑張ろう。」

楓は代わってあげることの出来ないもどかしさを感じていた。

「ぼくひとりでもがんばれる。」

奏空は涙を拭いて、事件の起きた日から初めて楓に笑顔を見せた。


その笑顔に楓は胸を締め付けられる。
小さな奏空。
8歳なんてまだ子ども。
小さな心に、どんな想いが巡っているのかも解らない。

それでも…。

「奏空は独りじゃないよ。奏も私もいるよ。…それからパパとママだって空にいるよ。」

楓は奏空に笑顔を見せた。


「そうだ。奏空にお星様のお話を教えてあげる。」

突然、楓は思いついたように手をポンッと叩く。

「おほしさまのおはなし?」

星が好きな奏空には気になる話だった。

「そうだよ。あのね……。」


       *


そして、そこで聴いた話が¨星の唄¨だった。


(…そういえば……。)

結衣の言葉で、奏空はあの時に楓が最後に話したことを思い出した。


『独りじゃないよ。みんな独りじゃないんだよ。』


…何度も何度も奏空に話してくれた。

だから何かあったら、なんでも話すようにも言われたし、哀しい時や寂しい時は必ず抱き締めてくれた。


あれはよく考えてみれば、哀しみや寂しさを少しだけもらってくれていたのかもしれない。


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