華の咲く場所

「まったく・・・やっと俺のものになったと思っていい気分で来てみれば・・・。お前、何を殺されかかってるんだ。」


やっと、って何かしら、どういうこと。

それについて聞けはしなかったけれど、感謝の意だけは伝えておく。

「・・・助けて下さって、ありがとうございました。」

会うのが気まずいなどの、先程抱いていた輪を描いたような気持ちは、さっきのいざこざの所為というかお陰というかで、どこかで吹っ飛んでしまった。

驚いたのは、あんなに厳重に鍵をかけて、心の奥深くに仕舞ったものが、紅藤様を見た瞬間、奥から飛び出して、鍵を壊して外にいとも簡単に出てきてしまったことだった。

「頬までぶたれたのか?」

紅藤様が、優しく頬に触れてくるのに、気持ちが彼に屈服するのを感じた・・・私は、紅藤様を前にして、『あの人』との誓いは、守れそうもない。

だって、助けてもらっただけなのに、頬に触れられただけなのに、労わってくれているだけなのに、こんなにも嬉しいのだ。

「・・・はい。」

「口の中を切ってはいないか?」

「・・・少し・・・ん・・・っ」

紅藤様は、私の口内の血を拭いとるように、深い口づけをしてきた。
それは、どんどん深いものになっていって、私は、座っていたふかふかな場所に押し倒される。

「ん・・・あ・・・っ」

駄目だ、溺れてしまう。

紅藤様に溺れたら私はどうなる・・・再び、女としての幸せを、望めるのか・・・。




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