華の咲く場所
「紅藤様・・・!」


真っ白な病室の中で真っ白な寝台に横たわった紅藤様は、病室に染められてしまったかのように、彼まで真っ白い顔色をしていた。

ずっと彼に付き添ってくれていたという召使いが、医師から聞いたことを私にそっくりそのまま話してくれた。

「手術は成功したようですが、なにぶん血液を失いすぎていた、ということで、このまま意識が戻らないと、危ないだろう、今夜が峠だと、先生はおっしゃっておりました・・・。」

まるでそれは、私に向かって死ねと言われているような、絶望的なにおいがした。

それだけ告げると、屋敷の人間はみな、何かあった場合はすぐに動けるくらい近くの別の部屋に移動していった―――私と紅藤様を二人きりにしてくれた。

紅藤様の天敵につながれたたくましい手を握ると、いつもはあんなに暖かいのに、今日は恐怖を感じるほど冷たくなっていた。

紅藤様は、私の復讐を、全て受け止めるつもりなのだろう―――私が行動を起こしたら、じたばたとみっともなく生に執着するのではなく、甘んじてそれを受け、そのまま死にゆくつもりでいたのだろう。

だって、彼は先程私に、愛してた、と、言ったのだ。それは、私を解放する言葉なのだろう・・・これから先、幸せに私がすごすために、言ったのだろう。

それがわかったから、早く早くと叫んだ。

死なせてはいけないもの、こんなにも私のことを大事にしてくれた人を、こんなにも私のことを思ってくれた人を、こんな想いのまま尋がいる世界になんて、渡さない・・・!

「紅藤様・・・私、ここにおりますのよ・・・」

紅藤様を失うことを恐怖し、体がガタガタと瘧のように震え、それがまともに発声することを妨げていて、かろうじて出した声までもが震えていた。

「私、紅藤様に謝らなくてはいけないのです・・・貴方に、これからも愛してもらわなければいけないのです・・・貴方を、これからも砂糖菓子のように甘く包まねばいけないのです・・・」




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