華の咲く場所

事件から1年と少しがたった、雪が周囲の音を奪うほど降る晩のこと。



その日、私は初めて紅藤様に意地悪をしようかな、と思った―――なぜなら、意地悪が成功する確信があったから。

いつものように私を抱きこんで眠ろうとする紅藤様に、にやけそうになる頬に必死で力を入れて、でもわざと体を思い切りくっつけて甘えるようにして。

「紅藤様、これから少しの間、私を抱くのはおやめ下さいな。」

すでにその時うとうととまどろんでいた紅藤様は、一気に目が覚めたらしく、「・・・なに」と不満げな、でもとても不安げな顔をして私を覗き込んできた。

うん、成功しそうだ・・・でもまだだめだ、ここでにやにやしたりしたら、失敗に終わってしまうもの!

私の言っていることがまるで理解できないらしい、ひょうひょうとした私に少しずつ怒りをあらわにしてくる紅藤様に、ひるんだりはしない。

だって、そんな彼を一発で沈めてしまえるような切り札を私は持っているのだから!

「ああでも、その間、我慢が出来ないなどと言って他の女のところに行ったりしないでくださいね、あまりその心配はしていませんけれど・・・」

「当たり前だそんなことするか!」

「それに、私、今欲しいものがとてもたくさんありますの、それも買っていただけないと困りますわ」

「じゃあ早く言え、できるだけ早く届くように手配をするぞ」

「紅藤様を甘やかすこともおろそかになるくらい、大変になるかもしれませんわね」

「はぁ?どういうことだ」

「そうね、これから20年以上は大変なことが続いて、お金がかかるのではないかしら。」

「・・・お前は何を考えているんだ!!」

最後には完璧に怒りを私にぶつけるように会話する紅藤様にそろそろ明かしてあげよう、と私の背にまわっていた紅藤様の手をとり、自分の胎のあたりに押し付けた。

それでもまだ本質は伝えずに、もったいぶるように彼にほほ笑むだけにする。





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