【短編】今夜、きみと最後のキスを
「直樹くん……」


あたしも、病院にいる直樹くんしか知らない。


出会った頃は入退院を繰り返してるって言ってた直樹くんだけど。

最近はずっと入院生活をしているようだった。



「あんな近くにある海にも行けない。……ケホッ……オレね、デートで海に行くの、ちょっと夢なんだよね……ケホ」

「大丈夫?」


突然咳の出始めた直樹くんの背中をさすった。

体調、よくないのかな……。



「ん。……ケホッ……最近夜になるとちょっと……ケホケホッ」

「もう暗くなるし、中入ろう?」

「ん……」


肩を貸そうとしたけど、やんわりと断られた。



「女のコに肩借りるなんてカッコ悪いっしょ?」

そう言って直樹くんははにかんだ。


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