Wolf..
男は俯きながら『人数足りねーし。』だとか、よく分からぬことを呟いていた。
まぁ俺には分からなかったけど、助けてくれそうな気がした。
期待を胸いっぱいに込め、俺は男の言葉を待つ。
『おぶってやる。』
ただその一言を…
「うん。決めた。」
「?」
男の言葉に俺が首を傾げたとき。
フワッと俺の体が、男の手によって宙に浮いた。
正確に言えば、目を瞑っていたから、宙に浮いた感覚がしたんだ。
「…わぁっ!なんじゃこりゃ!!」
「おいっ…、暴れんなよ。」
それは世にいう“お姫様だっこ”だった。
見事に俺は男に抱えられていた。
この状況が一気に恥ずかしくなり、俺は足をバタつかせ暴れた。
「いやだ!!離せ!!」
「ジタバタすんじゃねぇよ。ほら、首抱け、チビ。」
「う…っ」
先ほどまで和らいでいた怖さも、やはり顔つきがヤンキーじゃしょうがない。
ついでにドスの利いた声ときた。
黙って俺は男に従い、黙って男の首に抱きついた。
「俺んち…、分かるの…?」
「ハァ?分かるワケねぇだろ阿呆。俺んち近いから、取りあえず応急処置だっつーの。」
顔は見えないけど、俺を馬鹿にする顔が目に見える。
カンに障る…。
でも、こんな素晴らしい人が、日本に存在することにとても感動した。
「…ありがとう……。」
「おうよ。」
感謝の限りだ。
安心したあとには、また後悔の念が俺を襲った。
お父さんはきっと怒ってる。
三浦さんに俺が酷いことたくさん言って…
いっぱい怒ってるだろうな…。