花の家
 やっと香里が本気で怒っていることに気がついたのか、今度は鈴も何も言わなかった。

定位置も決まって、平穏を取り戻したランチタイムに香里は笑みをこぼす。

 やっぱり強く言ってみて良かった。朝蜘先生は凄いなあ。

 年上の言うことは聞いておくものだと納得して、ふと鈴が朝蜘先生に呼び出されていたことを思い出した。

「ねぇ、鈴。朝蜘先生、何の用だったの?」

 そんなに変なことを訊いたとも思えないのに、鈴は飲んでいた苺ミルクにむせる。

「な、何だよ急に。っつぅか、今更?」

「今更って言ったって、私休んでたし……」

 何か、言うのも恥ずかしいような悪戯がバレて怒られたのだろうか。

鈴の様子に、香里はそんな想像を巡らせた。
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