愚者
 葵が背後に視線を向けると、マスターで在る時雨が葵の間に割って入った。
「何だ、オッサン?」
「小僧。下らん真似は止める事だな」
「テメエには関係無いだろう!」
「大有りだ。この子は私の店の常連だ」
「だから、何だってんだよ!」
「これ以上、私を怒らせる気か?中年のオッサン全員が弱いと思ったら大間違いだ」
 時雨の全身から殺気が放たれる。葵は時雨の身体から立ち上る殺気に驚きを覚える。店に居る時の温厚な時雨とは全くの別人だ。
 時雨が少年との距離を詰める。時雨の全身から立ち上る殺気に、少年は本能的に実力差を察したのか後ずさりする。
「消えな」
 時雨の口から放たれた重厚な言葉を切欠に男子生徒は走り去る。
「大丈夫かい?」
「あ、有難う御座います」
「店の材料が無く成ってね。偶然通り掛ったんだ」
 葵は安堵感から意識が遠のき倒れそうに成るのを時雨が優しく抱き止める。
「もう大丈夫だ」
 優しい言葉の響きが葵を安堵させる。時雨は葵を優しく立たせて肩を叩く。
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