愚者
 葵は浮かんでは消えて行く選択肢を考え乍、表面的な平和が壊れ無い事を切実に願い続けた。

 昼食時間。葵は弁当箱を抱え小夜子のお気に入りの屋上へと移動する。教室内での扱いは変らず完全に孤立している。そんな状態で昼食を取る気がしない葵は、小夜子の存在をなぞる様に、小夜子のお気に入りの場所の屋上へと行きドアノブを捻ると、ドアは抵抗無く開いた。
―良かった
 葵は安堵の溜め息を漏らし乍屋上へと出る。この学校で只一つ落ち着く場所の屋上で、葵は風に吹かれ乍空を見上げドアを閉じる。           
 誰にも干渉され無い場所。孤独から来る寂しさよりもまだ気が楽だと思い、葵は給水等に迄は上る事無く、ドア伝いの壁に背を預けて、そっと座り弁当を広げているとドアが開かれた。
―えっ?
 葵は困惑する。この場所は滅多に人が来る事が無いと小夜子が云っていたが、眼の前に現れたのは、同じクラスの女子生徒三人だった。
「ちょっと、アンタ」
 ショートヘヤーの勝気な女生徒が葵に詰問する様な言葉を投げ掛ける。無論、今迄葵と話をした事等は無い為に名前等は分からない。
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