愚者
「何が可笑しい!?」
「旦那ともあろう者が、そこ迄狼狽するとはねぇ」
 銀髪の男はこれ以上話をしても無駄とばかりに懐から煙草を取り出し一服点けると、不機嫌極まり無いと云う表情で唾を吐き捨てる。
「お前には、今回の仕事を最後に手を切らせて貰う」
「そんな事を云って良いんですかねぇ?」
「何だ?」
「いやね……」
「小悪党なら小悪党らしく、金だけで動けば良いんだ」
 銀髪の男の蔑んだ一言に、小悪党と罵倒された男は薄ら笑いを浮かべ「ケケケ」と短く笑い乍話し出す。
「今回の仕事を最後にしてもあっしは構いませんがねぇ」
 含みを持たす云い方に、銀髪の男の全身から殺気が滲み出す。
「余り舐めた口を聞くと痛い目に遭うぞ」
「おっと、怖い怖い……」
 男は馬鹿にした口調で銀髪の男との距離を取る。
「アッシも情報屋の端くれですからねぇ。一応手に入った情報を伝えて置きますが、旦那、狙われていますぜ」
「なに?」
「どんな圧力にも屈する事の無い富田って刑事がね、色々と嗅ぎ回ってる見たいですわ。噂ではかなりエゲツナイ手段も平気で取るとか何とか。まあ、今回の仕事で解雇されるアッシには関係無いですがね。気を付けた方が良いとだけ云って置きますわ」
 馬鹿にした口調で会話を切り上げた小男は、再度「ケケケ」と奇妙な笑いを残して立ち去るのを銀髪の男は憎々しく見送る。
「……糞!」
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