愚者
 重い空気が流れる。緊迫した空気とは又別の種類の混乱と悲痛な思いが恵の全身から溢れ出して来るのが分かる。普通に考えれば、今私が伝えた内容等は理解の及ぶ範囲では無い。だが、現実問題として眼の前に立ち塞がっているのは事実だ。受け止めなければ成らない。数秒程時が止まったと錯覚する程に沈黙が続く中、私は説明を始める事にした。
 葵から聞いた話と関が集めた情報を、出来得る限り簡素に分かり易く話をする。この状態で細かい事を伝えるよりも、本質的な部分だけを伝える方が良いだろう。若干の時間を掛け、私自身伝える上で混乱をする事が無い様にゆっくりと説明をするが、無論恵からすれば衝撃以外の何物でも無い。どれだけ冷静に受け止めろと云ったとしても無理な相談と云う所だ。特に現在賭けの対象に成った上で、小夜子が間接的な被害に有ったと云う個所の話を聞いた恵の狼狽振りは凄まじい物があるが、至極当然の事だ。自分の娘が狂った大人の遊びの対象に成った上に、狂気の沙汰とも思える遊びに巻き込まれ、葵が只一人心を許し、支えて貰っている友人が賭けの巻き添えを食らい生死の境を彷徨っているのだ。恵は私の話を理解し様と必死に内容を受け止めるも、明らかに顔から血の気が引くのが分かる。それ程迄に酷い内容だ。
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