ツキハナ〜月の花束〜
『どうして……!』
カオの声が、頭の中で何度も響いてくる。


過去の過ち


「…もともと、リヒトさまが現れるまでの仮の両親役でしたから。」
はぁ…ため息をつき、女は静かに締め括った。

そのため息に、我に帰る。
「ヒカルが言ったのか?」「…ショウさまです。」
以外な答えが帰ってきた。「ショウ?」
更にたずねようとしたとき、カオが帰ってきた。


「ただいま〜」
お腹すいたぁ、とリビングに入ってきたカオは、目を大きく見開いた。
「なんで…」
そんなカオの驚きに、女が答える。
「カオ。実はね、お父さんの急な転勤が決まってね。カオ、この人と一緒に住んでくれないかしら?」
急な話に、カオは混乱しているようだ。
「カオ1人だと心配だし。この人はね?リヒトさんといって、私たちの古い知り合いなの」
いい続ける女の言葉を遮り、カオに言葉をかける。

「今日は、話がいってると思い、先走って迎えにいってしまい、混乱させてしまいましたね。」
安心させるように、なるべく優しい言葉を考える。

「これから、私と暮らしてくれませんか?」
「あなたと…」
じっと見つめてくるカオと目線を合わせ、微笑む。

カオがぽっと、頬を染める。初々しいその表情に、複雑な思いがわく。
記憶がないからこその、この表情―。

「あの…よろしくお願いします。リヒトさん」
「どうぞ、リヒト、と。」
こうして、私とカオは一緒に生活することになった。



< 7 / 76 >

この作品をシェア

pagetop