今夜も月が欠けている
始まりのまばたき
私は、まだこの家に住んでいる。まあ、他に行く所も無いからだが・・忘れもしない4年前、兄さんは、お母さん、お父さん、弟を、メッタ刺しに殺して姿を消した。あの日、部活で帰宅が遅くなった私だけが残された。兄さんの行方は未だに分からない。なぜ兄さんがそうしたのかも分からない・・・今日も、いつもの様に、母さんが殺されたキッチンでご飯を食べ、弟が殺された居間でぼんやりテレビを眺めた。もう慣れた・・・部屋に戻り、ノートを開いた、来年は受験だし、日常に追われてるし、過去の事は考えたくなかった。窓を見ても、どっかのアイドルみたいに、妖精や小さいおじさんなんて見えない、まあもうピーターパンだった時代は過ぎたのだ。受験というリアルを目の前に毎日うんざりだ。ノートの上で消しゴムを突っつきながら、岸波綾香はうなだれた。私はまだこの家に住んでいる。