ドラゴン・テイル

 リムレットの体が淡く光を帯びていた。
 光は徐々に強さを増している。

 すぐに、リムレットは直視出来ないほどの光に覆われてしまった。

「リム!! リムレット!!」

 ウルは必死にリムレットを掴もうと手を伸ばすが、自分がどこに手を出しているのかすら確認できない。
 目を開けない程の、手で目を覆ってもまだ眩しい光の中、リムレットの声だけを頼りに手を振り回す。

「ウルー!! ウル! 助けて!!」

「リムレット!! 見えないよ! どこにいるの!?」

「怖いよ! 助けて!」

 リムレットもウルも、パニックに陥っていた。

 ウルは、必死に手を振り回す。
 リムレットも、必死でもがいていた。

 だが、二人の伸ばす手が触れ合う事はなかった。

「きゃぁ! やだ! やだやだ!
 何これー!」

 リムレットの声が、どんどんと空に向かって登り始めた。

「リムー!!」

「いやぁっ! 怖いよー!
 パパ! パパぁ!」

 声が遠ざかる。

 ウルの手の届かない位置まで浮き上がったリムレットの発する声。
 それでもウルは必死で上向かって手を伸ばし……、

 ずべしゃっ

 足元の雑草に足を取られ転倒した。



 バサッバサッ



 羽音が聞こえる。

 ドラゴンは、リムレットと向き合って飛んでいた。







 我が歌を聞きし者よ






 魂の戻る場所へ……










 目が開けられないほどの光と、耳を塞ぎたくなるほどの羽音と……確かに聞こえた体に響く低い声…。


「い……や………」

 微かに聞こえる、リムレットの弱々しい声。


「リムレット!」

「いやぁぁぁぁぁぁっ!!」



 リムレットの悲鳴が木霊した瞬間。


 光が、羽音が、消えた……──。





 そこにはただ、うずくまり耳を塞いでいるウルだけが取り残されていた。

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