ドラゴン・テイル

「君たち! 一体何をしている!」

 突然かけられた声に、ウルとクレイグは一瞬ビクンッと体を震わせた。

 視線を向けると、真っ白な鎧に身を包んだ若い男が立っていた。
 左胸の位置に刻印された紋章に目が行く。

 黄色い線で縁取られ、赤い下地の上に黄色で国王が住む城のシルエットが象(かたど)ってある。

 この国、グランドールの紋章だ。

「すげぇ……クルセイダーだ……」

 クレイグが唖然とした表情のまま、小さな声で呟いた。

 クルセイダーとは、一般の軍兵─ナイトの中から実力・頭脳の面で厳しく選抜された者達の名称だ。

 言わば、国の最精鋭騎士団であり、クレイグの目指している場所でもある。

「ルーヴァの民ではないな? ルーヴァはモンスターに襲撃されて、見ての通りだ。街で生き残った人々は、皆我々が保護している」

 クルセイダーはそう言うと、表情を和らげて言葉を続けた。

「ここに残された方々の供養は、我々がしよう。いつまたモンスターが襲ってくるか分からない。君たちは早く自分の家へ帰りなさい」

「……はい」

 ウルが短く答えると、男は小さく頷きその場を立ち去った。

 クレイグは、ウルの後ろでしきりに「すげぇ」「かっこいい」の単語を繰り返し口にしている。

 クレイグがそう言うのも無理は無い。

 普通のナイトと違い、クルセイダーは滅多に出動しないのだ。よって、一般人がクルセイダーを目にすることも少ない。



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