ドラゴン・テイル

 目に止まったのは、街道の脇に一部分だけこんもりと盛り上がった茂み。

 そこには、小さな手のひらサイズの人の形をした生き物がコソコソと隠れていた。

「……クレイグ。ほら、あいつだ」

 指を指し、その小さな人の場所をクレイグに伝える。

「……なんだよ、ピクシーじゃん」

 ずぶ濡れ状態で、クレイグは溜め息を落とした。

 ピクシーとは、小人の種族だ。

 意外と妖精に間違えられがちだが、妖精と違い様々な種類の魔法を操る。接近戦が最も苦手だが、魔法の範囲が狭く、相手にぎりぎりまで近づかなければ魔法を使えない。

 よって、ピクシーが誰かに魔法を使う事はごく稀なのだが…。

 無造作に、クレイグが手を伸ばしピクシーを摘み上げる。

「おいこら。どーしてくれんだよ、これ」

 顔の前まで持ち上げて、ピクシーを睨みながらクレイグが文句を言った。

 小さな、体全体が緑色を帯びたピクシーの瞳には白目の部分が無く、全て黒目になっている。ふさふさの髪の毛は逆立って、クレイグに向かい「キーキー!」と文句を言っている。

 恐らく「降ろせ」といいたいのだろう。小さな体を一生懸命バタバタさせている。

「クレイグ……」

「あ? 何だよ」

 ウルは、ふとある事を思いだし、クレイグに声をかけた。

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