ドラゴン・テイル
 
 球から激しい光が迸(ほとばし)り、暗い夜空を明るく照らし出した。

「ぐぁ……ッッ!!」

 目も開けられないほどの閃光の中、誰かの声が聞こえる。

 クレイグは、気配だけを頼りに一歩前へ踏み込み、剣を握る手を左手に持ち替えてから振り上げるように一閃した。

 ザスッッ

 確かな手応えと共に、悲鳴が上がる。

 クレイグに切られたクルセイダーが地面に倒れるのと同時に、辺りを支配していた光が消えた。

 セルフィリオーナとシミター男が、動きを止めたクルセイダーをほぼ同時に地面に押さえつけた。

「はぁ……一時はどうなるかと思った」

 起きあがろうとするクルセイダーの裏首に短剣を突きつけながら、セルフィリオーナがため息混じりに言う。

 そんな彼女に、地面に伏したクルセイダーが声を上げた。

「貴様ら……こんな事をして、良いと思ってるのか……ッ?!」

 その言葉に、セルフィリオーナは少し肩を竦ませる。

「思ってないわよ。でも、それはあんたらも同じ事よ?」

「……何だと…ッ?」

 ギラッと鋭い眼光を向ける。

「ルーヴァの件よ。いくら王サマの命令でも、やっていいことと悪いことの判断も出来ないの?」

 ─………自分だって、盗賊とか言ってたクセに……。

 口に出さず心の中で突っ込むクレイグ。

「王の命令は絶対だ……ッ!」

「バカね。主が間違った事をしないように正してあげるのも忠実な部下の義務でしょう?」

 言うクルセイダーに、呆れた顔で言い返した。

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