ドラゴン・テイル


 ─漆黒の空間に眠りし魂よ


 逃げまどうクレイグに気を取られている隙に、ウルは詠唱を始めた。


 ─汝が眠りを覚ませし者に


 宝玉のかけらが、僅かな光を帯びた。


 ─邪を打ち砕く力を与えよ……


 光宝玉の欠片が、一つの形を作り始める。それは徐々に大きくなっていった。


 ─風の刃に其(そ)を交え、其の前に立ちはだかる者に……


 ウルの詠唱にカスタールが気づき、視線を移す。

 だが、遅いッ!

 ─……滅びを与えんッ!!

 最後のワードを唱えた瞬間、寄り集まった宝玉から激しい光が迸る。

「もう一度眠れ! 今度は永遠にな!」

 ウルの言った言葉に、怒り狂ったカスタールが雄叫びをあげながら突進してくる。

「ドラゴンテイルッ!!」

 言葉が力を持ち、それに呼応して宝玉が形を変える。

 光剣に変わった宝玉は、ウルに迫るカスタールを背中から貫いた。



 激しい断末魔をあげながら暴れるカスタールの体から、黒い靄が吹き出していく。

 それは、僅かな風に流れ、消滅した。

 後に残るカスタールの姿が、灰のようにバラバラと崩れ………辺りに静寂が落ちた。




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