ドラゴン・テイル

 相手に敵意が無いと分かると、すぐに友好関係を築こうとするのは人間の心理だろうか。

 始めは半ば逃げ腰で話していた警備兵だが、だいぶ馴染んだらしく、今町で竜を讃える祭りを開催していた事、十年前に竜に救われた事、さらに家庭内の状況等を熱弁している。


 その話題で、ドラゴンが一番興味を持ったのは十年前の話だった。

「やはり、お仲間の活躍は興味があるのですね」と、笑顔で話す警備兵。

「折角ですし、町へお立ち寄り頂けませんか? きっと、皆喜びます」

 その言葉に、ウルはあからさまに嫌そうな顔をする。

 ドラゴンはそれを見逃さなかったが、あえて気づかない振りを装った。何の理由があるにせよ、ウルとは初対面なのだ。自分に嫌われる理由はないはずだ。……好かれる理由もないが。

『ご厚意に甘えることにしよう』

 喜び、町へドラゴンを導く警備兵達と、この世の破滅五分前のようにガックリうなだれるウル。




 =……小僧、そんなに私が嫌いか?=


 キィンと軽い耳鳴りのような音と共に、ドラゴンの声がウルの頭に響いた。

 はっと顔を上げると、変わらず警備兵はドラゴンに話しかけながら歩いている。

 ドラゴンに視線を移すと、目が合った。




                  _
< 66 / 257 >

この作品をシェア

pagetop