ドラゴン・テイル

 店員が口にした値段は、店員の宣告通りの値段だった。

 人一人が二年は遊んで暮らせる位……と言うべきか。

 物価の安い地域に行けば五年は楽に暮らせるだろう。

「だから言ったでしょう?」

 黙ってしまったウルに、店員が呆れた顔で言った。

「確かに、ずいぶんと値が張る。ここから値切るならいくらになる?」

 店員が軽く息を付く音が聞こえた。額が額なだけに、値切っても変わらないと思ったのだろう。

「そうですね………仕入れ値が七百万ギニー、売値が八百万ギニーなので、七百五十万ギニーといった所でしょうか……」

 答えは聞かなくても分かっていると言わんばかりに、商品陳列の仕事を再開する店員。

 ふむ……と、ウルは少し考えるような素振りを見せた。

 巾着に入っているコインは全て金貨。鉄貨(小)が一ギニー、鉄貨(大)が十ギニー、銅貨が百ギニー、銀貨が千ギニー、金貨が万ギニーの計算。

 ちなみに、鉄貨が二種類あるのは、最も生産率が高いからだとか。二種類の大きさは、小さい方が成人の指の爪程度。大きい方は、他のコインと同じで親指の腹の部分くらいの大きさだ。

 ウルは、現在手持ちの段階で九百万ギニーを持っている。

 どうするか……。

 正直な所、このワードアイテムと言われる物は魔術師であるウルには全くと言って良いほど無用の物。

 これを欲しがるのは大抵が魔法を使えない旅商人。
 実質魔力を必要とするワードの部分を補うアイテムの為、魔力が無い人間でも魔法が使えるのだ。

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