シムーン
残されたのは、私と勇だけだった。

「――勇…」

目の前の愛しい人を私は呼んだ。

答えるように勇が私のところにきたと思ったら、抱きしめられる。

大好きな人の、大好きなその香りに躰が包まれる。

その背中にそっと両手を回すと、私の目から涙がこぼれ落ちた。

「――真希、悪かった…」

そう言った勇に、私は首を横に振って答える。

「俺は、真希しかいらない。

真希しか、愛せない」

それは、私だって一緒だ。

あなたしかいらない。

あなたしか愛せない。

唇に、温かいものが触れる。

愛しい人からのキスを、私は黙って受け入れた。
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