シムーン
私は彼――森藤勇に恋をしている、と。

いつから、恋をしていたのかはわからない。

初めて出会った時からかも知れない。

甘い香りに包まれたあの日から、彼を好きになったのかも知れない。

だから、彼からの突然過ぎるキスをされても私は拒まなかった。

むしろ、それを受け入れた。

「――何してるのよ…」

気づくの遅いよ…。

遅過ぎるよ、私…。

そんなんだから、チャンスが逃げてしまうんだ。

せっかくのチャンスを、逃してしまうんだ。

「――バカ…」

自分にしか聞こえない小さな声で、呟いた。

時が過ぎて、あっという間に歓迎会の日を迎えた。
< 90 / 176 >

この作品をシェア

pagetop