シムーン
南野か。

心の中で俺は舌打ちをした。

「お久しぶりです」

作った感丸出しの笑顔で、俺は言った。

いつ見ても眉目秀麗な容姿をしているうえに、嫌みなくらいにスーツが似合っている。

そのうえエリート一直線となれば、世の女たちは黙っちゃいないだろう。

ま、彼女持ちじゃなければの話だが。

「どなたかお探しですか?」

爽やかな笑顔で、南野は首を傾げて聞いてきた。

「ええ、まあ」

対する俺は、我ながらうさんくさい笑顔を見せている。
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