シムーン
ドン!

肩がぶつかった瞬間、俺はハッと我に返った。

視界に入ったのは、フワフワした茶色の髪だった。

「――あ、ごめんなさい…」

申し訳なさそうに長いまつ毛を伏せて、彼女は謝った。

やめることなんて、無理だ。

「――えっ…?」

気がつけば、俺は彼女の腕をつかんでいた。

「ちょっと…!」

何か言いたそうな彼女を無視して、その腕を引っ張った。

ほんの一瞬の出来事だった。

何も考えていなかった。

この会場から…思わず君を、連れ去った。
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