アリィ

「ゆっぴーもさ、そんなダサいのじゃなくて、もっとオシャレすればいいのに」


相変わらず失礼なことを、と思ったけれど、今日の私の服装と言えば、

よれたTシャツにやぼったいキュロットパンツ、そして汚れて白が茶色に変色している学校指定のスニーカー。


ダサいという自覚は充分にあるので、アリィの言うことはごもっともである。


でも痴女になるくらいならダサいままで、私はいい。




フロアを一回りしたところで、ふとアリィが思い立ったように声を上げた。


「あ、ゆっぴーちょっと待ってて!」


そしてひとりで店の中に入って行ってしまった。


なんでも一緒にしたがるアリィが、めずらしいこともあるものだ。


ひとり残された私は、することもなくて店の前でぼうっとしていた。


じゃらじゃらキラキラした小物が所狭しとならんでいる、どうやら雑貨屋らしい。


「おまたせぇ」


ほどなくして雑貨屋から出てきたアリィの手には、もこもこしたものが二つ握られていた。


「ほら」


差し出されたのは、こってりした顔のクマのマスコットがついたキーホルダー。


「ピンクがアリィで、黄色がゆっぴー!」


舌を出したクマのいたずらっぽい表情の、なんと憎たらしいこと。


「かわいいでしょ、流行ってるんだよ」


これのどこが可愛いの?


「つけてあげるね」


ねだられるままに、バッグを差し出してしまう私。


手元に戻ってきたバッグには、ぶらぶら揺れるクマの顔。


「……ありがとう」


もらって、しまった。
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