アリィ


アリィを駅まで見送って、お泊まり会は終わった。


長かったようで短かったような三日間。


大きなバッグを二つ抱えてよろよろ去っていった背中は、心なしか満足そうに見えた。




安堵のため息をつく。


不思議なのは、あんなに嫌で嫌でたまらなかったのに、終わってみればそんなにストレスがたまっていないということだ。


散財したから?


それともメロンがおいしかったから?


きっとそうだ。


そう自分を納得させて我が家へ帰ったら、自分の部屋が異様に広く感じた。


心なしか雰囲気も変わってしまった気がする。


……この部屋、こんなに寂しかっただろうか。


と考えて、すぐに打ち消す。


これじゃ、アリィがいなくなって私が寂しがっているみたいじゃないか。


そんなことは絶対にない、慣れない人の気配に触れて感覚がおかしくなってしまっただけで、

これは来たのがアリィじゃなくても誰でもこうなっていたに違いない。


そう、そうに決まっている、と言い聞かせつつ、違和感をぬぐえないまま夏休み最後の一行日記に取りかかる。


くるくると頭を働かせ、ふっと思い浮かんだまま鉛筆を走らせた。




『台風も過ぎれば寂しいものです』




読み返して戦慄する。


私は何を書いているんだ!


あわてて力いっぱい消しゴムをかけた。




背中に一筋の汗が伝う。


乱れる呼吸にツクツクボウシの悲鳴が交差する。




夏休みが、終わっていく。




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