アリィ


二人が向かった先は、やはり体育教官室。


麻生先生が開けたドアの向こうに、カナエ達の姿が見えた。


しかし、当たり前だが二人が入室するとドアはすぐに閉められてしまった。


どうしよう、これじゃあ何も分からない。




体育館の中と外、教官室の出入り口は二ヶ所ある。


部活を始めようとする生徒達が、体育館の中にはちらほら現れ始めている。


ここじゃ中の様子をうかがうには目立ちすぎてしまう。


私は上靴のまま外に飛び出した。




運動場に面している外側の教官室のドアの前に、私は立った。


中から、大きな声が聞こえてくる。


でも運動場で練習を始めた野球部のかけ声に邪魔されるせいもあって、何を言っているのかまでは分からない。


もう少し、近づいてみよう。


私はドアにぴったりと耳を寄せて、必死に会話を聞き取ろうと集中した。


すると、今まで聞こえていた大声がぴたりとやんだ。


不思議に思ってドアから耳を離すと、内側からドンドンとノックが聞こえて、私は驚いて後ずさった。


その直後、ドアが開いて五十嵐先生が顔を出した。


「さっきからそこで何をしているんだ!」


あまりに突然のことに固まってしまっていると、麻生先生が声をあげた。


「後藤さん、どうしたの?」


駆け寄ってくる麻生先生の肩越しに、アリィの姿が見える。
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