アリィ
時計を見れば、いつのまにか深夜になっていた。
寝てしまおうかとも思ったけれど、メイクやヘアアレンジの練習をしなければならないので徹夜することにした。
ここまできたら、目がさえて眠れやしないのだ。
洗面所の鏡の前に立ち、前髪をあげて、まずは眉をそる。
雑誌の通りに、眉尻を細くし、眉全体の毛を短くカットした。
平安時代の麻呂みたいになってしまったけれど、こうしたほうがメイクをするのには都合がいいらしい。
髪色に合わせた、アイブロウと言うらしい鉛筆のようなもので、眉を書いていく。
左右対称にするのはなかなか難しい。
なんとか書き終えたら、次はアイメイクだ。
アイラインを引いて、ぼかして、アイシャドウを塗って、またアイラインを引いて。
まつ毛の生え際の粘膜にもラインを引いたら、手が震えて眼球をつついてしまって痛みにもだえた。
血走って真っ赤になった目を、さらにマスカラで痛めつける。
ブラシでまつげをなでたいだけなのに、どうして目につっこんでしまうのだろう。
異物を排除しようと生理的な涙が一筋頬を伝ったら、それはアイラインで黒くにごっていた。
あわててティッシュで押さえたけれど、ラインはにじんでしまった。
四苦八苦してアイメイクを終えたら、ああ、まだファンデーションを塗っていなかったことに気づく。
ベースメイクはアイメイクの前じゃないといけなかったのに。
しかたないので、アイメイクを崩さないように化粧下地を塗り始めた。