アリィ

終礼が終わると、アリィは私への別れの言葉もそこそこに教室を飛び出していった。


アリィはテニス部に所属していて、早く準備をしておかないと先輩にうるさく言われてしまうそうだ。


「次の大会が引退試合だから、今まで以上に練習がピリピリしてて、ヤな感じ」と、昨日愚痴をこぼしていた。


文句があるなら今すぐにでも辞めればいいのに。


他人と汗水たらして妙な仲間意識持って、何が楽しいんだ……と、フリーの身である私は思う。


ちなみに、『親友』になって以来なんでも一緒がいいというアリィから私は再三テニス部に入るよう誘いを受けたが、もちろん丁重にお断りした。


私が部活を、しかも運動部をやるだなんて、天と地がひっくり返ってもありえない。


根っからの文系インドア派なのだ、私は。


アリィの姿を見送ったあと、教科書のたっぷり詰まった重いカバンを、勢いをつけて背負う。


見渡してみると、大半のクラスメートもアリィと同じように、あせって部活へ向かっている。


一日授業を受けたあとに、まだ何かしようとするその元気が信じられない。


まるで私に見せつけるかのように、みんなは活気づいている。


私は劣っているのだろうか。


こんなに日々さまざまなことに耐え生きているのに、報われないのはなぜ?


ぶりっこで、自己中で、普段はふにゃふにゃしているくせに、それなりの成績をとりつつ部活までこなしているアリィの要領のよさに腹が立つ。


ああ、憎らしい。


でも今日は金曜日。


明日から二連休だと思えば少しは気持ちが軽くなるじゃないか。


「一週間、お疲れ様」


隣のアリィの机を小さく蹴飛ばして、私は教室を後にした。
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