アリィ

洗面所へ着いた。


が、ヘアバンドが見当たらない。


どこへ行ったのか。


起ききらない体は重くて、すべての動作が緩慢になる。


カタツムリにも負けないのろさでしゃがみこむと、洗面台の下に落ちている歯ブラシを見つけた。


ホコリの海に飲みこまれておぼれている。


なぜ、いつ、こんなところにこんなものが落ちてしまったのだろう……

見ていたらますます憂鬱になって、ヘアバンドを探すのは諦めた。


私は鎖骨が隠れるくらいの長さの髪をそのままにして顔を洗い始める。


うつむいて顔に水をひっかけると、やはり髪がしだれてきて邪魔だ。


わずらわしくて薄く目を開けると、水と一緒に髪の毛が海藻のように揺らめきながら排水溝に吸いこまれようとしているのを見た。


薄暗い照明の中にぽかりと浮かんでいるその穴は、私を飲みこもうと待ち構えている暗闇の口のようで、

恐ろしくなって反射的に身を引いた。


髪の毛に含まれた水がパジャマを濡らし、その冷たい感覚で我に返る。


くだらない。


洗面台の横にかかっているタオルに顔を思いっきりこすりつけた。


湿った生臭さが鼻の奥を通り過ぎて、ふと鏡の中の自分を見れば、眉間に大きなニキビができているのに気づく。


憂鬱を超えて、鬱々だ。

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