ショコラトリー
ある日、ショコラは出会ってしまった。大人には見えないフェアリー達に。
二人のフェアリーはショコラを見て微笑んだ。


「今、私たちの仲間が最後の仕上げに向かった所よ?」


フェアリーはそう教えてくれた。
ショコラは目を輝かせて尋ねました。


『最後の仕上げってなあに?』


二人のフェアリーはまたにっこり笑って答えました。


「私たちは、包まれた箱の中に入ってチョコに最後の仕上げをするの。
仕上げるタイミングは、チョコが口の中に入り溶けていく瞬間。」


ショコラは悲しい顔になり、問いかけました。


『フェアリーさんは、食べられちゃうの?』


二人のフェアリーは顔を見合わせ、クスリと笑い出した。


「違うよショコラ?
私たちはね、このお店のチョコを食べた人の心の中にある“幸福感、悲しみ、喜び、苦しみ”のどれかをもらって生きてるの。
チョコレートが完全に溶ける頃には、またこの場所に戻ってくるのよ?」


『じゃあ消えないの?』


ショコラの問いに、フェアリーはコクリと頷いた。
どうして自分の名前を知っていたのか?その時はどうでも良く思えた。
それから毎日、フェアリーが話してくれる話に耳を傾けた。
その話はいつも甘くてほろ苦く、幸せで楽しい物ばかりでした。
この前来たお客様の恋の話し、小さな男の子がママに怒られ、こっそり食べた可愛い話し。
そのほかにもたくさん話し聞かせてくれた。


< 2 / 22 >

この作品をシェア

pagetop