腕時計
翌日の20時

寮前に小口さんが黒光りの車で迎えに来た。
「こんばんは」
「ごめんね。遅くなっちゃった。お腹空いたでしょう。」
と言いながら、助手席のドアを開けてくれた。
「どうぞ。」
生まれて初めてだった。男の人にエスコートされたのって。嬉しかった。

お店に着いた。パスティーナというパスタ専門店だ。わたしは、あまりトマトが好きでわなくて、クリームパスタを頼んだ。
「小口さんのパスタもちょっと食べてもいいですか?」二人して頼んだクリームパスタを互いに分け合いながら食べた。

帰り道、TUTAYAに寄ってDVDのブースに二人で映画を選んだ。
「一緒に見る?」
「うん。」

二人でスパイダーマンの映画を見た。
映画の途中、彼の手がわたしの肩をそっと抱きしめた。もう映画の内容なんて覚えていない。
彼がわたしにそっとキスをした。
「もう寝よっか。」
「うん。」
小さなシングルのベッドに二人で眠った。
初めてあなたと過ごした夜だった。
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