君が、イチバン。

幕間


幕間




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一条は気丈に笑う椎那に苦笑した。

店に着くまでの残り短い間、繋いだ手は離さなかった。
彼女の様子から、前の職場のあの二人がただの関係じゃないと確信している。

『鰐淵』という名前をきいて分かりやすく動揺したのだ。持ち直したのにコンビニで出会うなど予想外だったのだろう。
いつも飄々とした彼女がこれ程動揺する『なにか』があったのだろうけど自分が踏み入れていい事情じゃない、と一条は思う。
けれど、離された手に、

「聞きたいとは思います」

それは本音だった。

言う気があったわけじゃない。
事実、弱った女性にこういえば、どう思われるかなど想像しなくても分かる。過去の経験から弱った女性に優しくするのは辟易していた。
しかし、一条は今純粋に、彼女の過去に彼女を傷付けた存在を意識して、知りたいと思ったのだ。
椎那にどうとられても構わなかった。愛だの恋だの囁く気はない。
しかし、自分の中に確かに息衝いた感情に一条は苦笑するしかなかった。

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