君が、イチバン。

それから、チビチビとビールを飲んで、ゆっくり瞼が重くなる。思ったより疲れていて、そういえば最近モヤモヤばっかりで眠れなかったな、と思ったら瑛ちゃんののほほんとした顔が目に入って、えい、とつまみにしていたピーナッツを投げつけてやった。

「なに、遊んで欲しいの?」

なわけあるかい。

もう一回投げつけたら華麗にキャッチされた。どんな動体視力だ。
悔しいから2個同時に投げる。進行方向が同じだったからあまり意味なくこれもあっさりキャッチされた。つまらん。



「眠い」


重い目をこする。何だか気が抜けて眠気が襲ってきたじゃないか。そんな私に瑛ちゃんは笑う。

「しいちゃんのそうゆう所が好きだよ」

癖のある口調は優しくて落ち着く。

「はいはい」

簡単に好きだとかいう甘い男なのだ瑛ちゃんは。このスケコマシ。
細い目で見ると瑛ちゃんはおかしそうにクツクツと笑っている。
やっぱりなんか悔しい。ウゲウゲと悪態をついて布団の中に潜り込む。ふて寝だ、ふて寝。


だけど、やっぱり気になって、モヤモヤの一部を吐き出す様に私は毛布にくるまりながら頭だけ出した。

「…瑛ちゃんはさ、大切な人はいるの?」

仕事の事も、瑛ちゃんが誰かを想っているかもしれない事も、私は何も知らない。



「…うん?いるよ」


瑛ちゃんは静かに答える。その答えは少し私を動揺させる。予想と期待は違うから。曖昧な関係のこの人を離したくないと思うのは私の勝手なエゴなんだろう。


「勿論、しいちゃんだよ」

いつもの癖のある口調にすぐ戻ると優しく私の頭を撫でた。


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