君が、イチバン。

ココアパウダーや薄力粉を正確に計量しながら、フゥと息をつく。
オーブンから香るフワフワした甘い匂いも、出来上がりの達成感もやっぱり自分の胸に響く。
好きなんだなぁと実感させられて、きっかけをくれた一条さんにはすごく感謝してる。

向き合えてるなぁとしみじみ思えば、今度は別の場所が疼き出す。一進一退してるようで、結局何も変わってないんじゃないかと不安になる。


四宮君が派手に背中をつつくから、モヤモヤしてばかりじゃいられないと吹けば飛びそうな意思をセロハンテープでくっつけてもどのみち心配な応急処置で。
20代も半ばになって、落ち着いてきたと思ったのにこれだもの。いくつになっても感情なんて厄介で、時々捨ててしまいたいと思う程揺さぶる。

息を吸い込んで、吐く。

それから、大丈夫、と自分に言い聞かせるように呟いた。


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