君が、イチバン。
キツネにつままれた気分で店に入ると、四宮君の隣が僅かに空いていて、絡んだ目線がここに座れと言っているような気がした。気のせいだと思いたいが、四宮君が指先でトントンとしたから気のせいじゃないらしい。仕方なくその隙間に座る。
一条さんは相変わらず涼しい顔で向坂さんに何か小声で話しかけていた。多分さっきの電話の事だろう。
「飲み過ぎんな」
四宮君がぼそりと呟く。四宮君よ、時すでに遅しだ。
「あのさ、四宮君、私一応年上なんだけど」
年がどう、というよりなんか子供扱いしてませんか。
「は?」
「いやいや」
「は?」
「…ごめんなさい」
こわいよ、しのみやくん。
仕方なく、目の前のチョコレートをちびちびと食べる。ビターなチョコはほろ苦い。
「…なんで」
え?
「なんで一条さんと入ってくるわけ?」
ええ?
四宮君の刺すような視線が痛い。なんで、っていわれても。初めから話したら結構酷い事になるよ、と酔った頭がぐるぐるする。
「なんでいちいちゆわなきゃいけないのさ」
話しても良いけど、もう面倒くさい。キツい言い方になったかな、と思ったら案の定四宮君はムッとしている。
だから、笑えって。折角美人な顔なのに。
「…になんだよ」
「ん?」
「気になんだよ」
さっきまで全く酔いの見せなかった色白の肌が赤い。
あれ?
予想外の反応に驚く。
彼の事だから不機嫌に返事があるだろうと思ったけど、なんだ?照れてる?
ちょ、反則。