君が、イチバン。
◆◆◆


ひどい吐き気に目を開けると、霞む目で自分の部屋じゃない殺風景な部屋を見渡した。


「あ、起きた」


声の主はベッドの上で背中から私を抱き締めている。

「…瑛ちゃん」


「しいちゃん、珍しく飲み過ぎちゃったね」


瑛ちゃんが緩く笑う。優しく私の髪を解いてくれるから、安心する。
もう夜があけたのかと思ったら、壁にかかった時計が指す時間はまだ明け方だった。
瑛ちゃんは欠伸をしながら軽く伸びをする。

いつの間にか大きめのトレーナーを着ていて、着替えさせてくれたんだと思う。

「ありがと」

ぎこちない表情筋は疲れている証拠だ。

「どういたしまして」

瑛ちゃんが笑う。
けど、なんで瑛ちゃんちに。

「あの後、しいちゃん酷かったからー」

お持ち帰りしました、という瑛ちゃん。全然記憶がない自分が痛い。
うえぷ。吐き気が襲ってきて、掌で待ったをすると洗面台に駆け込んだ。

久しぶりだ、この感覚。最悪だ。気持ち悪い。


それからすぐに瑛ちゃんが背中を擦ってくれた。

「…酔いつぶれても知らないんじゃなかったの?」

荒い息を押さえながら洗面台に顔を向けたまま聞いた。

「ほっとけないでしょ」

多分、酷い匂いだし、化粧が恐ろしく崩れて酷い顔の私を気にした様子もなく、いつの間にか水を入れたグラスを持った瑛ちゃんは笑って私に渡した。


「…ありがとう」

女として終わってるこの姿を見ても引かないのは瑛ちゃんくらいだと思う。

とにかく気分の悪さと眠気にまたベットに潜りこんで、死んだ様に眠りについた。



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