君が、イチバン。

店について、らっきょさんの「楽しかった!また飲もうよ」というテンションの高い声と皆のごく普通な態度に、取り戻せない記憶はそこまで何かしでかした訳じゃないんじゃんかと胸を撫で下ろす。
ゆかりさんも途中から記憶がないらしい。冴草さんだけは「今度おはなし詳しく聞かせてね」と笑った。こわい。

事務所に一条さんがいたから「…昨日は迷惑かけてすみません」と頭を下げると「迷惑?それより、昨日は大丈夫でしたか?」とむしろ心配された。
どうやら、一条さんが席を外した間に私は帰っていたらしい。挨拶もしなかったなんて不覚だ。

一条さんはいつもと全く変わらない。あのキスはやっぱり夢だったのか。にしてはリアルな夢だ。大体、ここの人は皆キス魔なのか。新人にはキスする決まりでもあるのか。

眉を寄せていたらしい私に一条さんが「どうしました?」と首を傾げる。

私達、フレンチなキスしませんでしたかね?なんて聞ける筈もなく。

まあ、いいか。と思考を追い出して「なんでもありません」と曖昧に笑っておいた。

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