君が、イチバン。

「そういえば、よく家分かりましたね?」

私の言葉に、一条さんはああ、と微笑む。

「君の住むアパートは祖父の持ち物でして。面接の時に履歴書を拝見してから覚えていたのですよ」


なんと。何者だ、一条氏。始めから個人情報など筒抜けだったのか。

「露骨に嫌な顔しますね。大抵の女性は食い付きますが」

クスクスと笑う一条さん。

「食い付いてますよ」

ヒレ肉にね!

「個人情報は漏らしませんのでご安心下さい。ああ、そのヒレ肉はシャトーブリアンです。柔らかいでしょう」

シャトーブリアンってなんだ。犬の名前みたい。

「食事は逃げませんからゆっくり味わって下さいね」

一条さんは貴族みたいな綺麗な食べ方をしている。ほんと、何者なんだ。
それよりも、この奇妙な食事会はなんなのか。今それを聞いたら途端に美味しい料理も喉を通らなくなりそうだからデザートを食べてからにしよう。



< 79 / 244 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop