魔念村殺人事件
「陸、俺と一緒に明日、魔念村に行ってくれないか? 依頼料なら払う」


「俺も? もちろん春樹の頼みなら断らないよ。それと依頼料は要らない」


 陸は春樹に微笑んだ。すると春樹も陸が一緒に行くことになり、少しは元気が出たのだろう。


「陸、お前、そんなんじゃ儲からないだろ」


 春樹は、そんなふうに軽口を云うと、ようやくいつもの笑顔を見せた。


「大きなお世話だ」


 陸は口を尖らせ、半分笑いながらそう云いった。けれども頭の中では、ケムンドウという魔物がわざわざ切手を貼り、パソコンか何かの文字を印刷して手紙を出すなんて思えなかったのである。

 嫌な予感がしたのだが、それを払拭するように、久しぶりに会った春樹と他愛もない会話を始めたのだった。

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