魔念村殺人事件
 ――突然強い風が吹き、足元がふらついた。

 目の前にはすぐ行けるであろう「死」が用意されている。

 しかしこのままでは死ねないと「私」は思った。

 始めて生きる意味を見つけたかのようで、これほど強く生きよう、生きたいと思ったことはこれまで一度もなかった。

 復讐と云う名の生きる糧。

「私」はビルの屋上に背を向けると、ポケットからタバコを取り出し、ジッポで火を点けると、ゆっくりと吸い込み、暗く星も見えない空に吐き出した。

 そして一度も振り返ることなく階下に歩みを進めた。

 それは復讐が始まる合図でもあったのである。
< 4 / 151 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop