妖不在怪異譚〜船幽霊〜

…何事もなく、無事に港に戻ったその後。

ヨットをハーバーに預けた伸也は、港の近くの土産物屋を訪れた。

うず高く煎餅や饅頭やらが積まれた店の奥に、書籍が置かれたコーナーがある。

「うん、これは?。」

その中から、一冊の本を手に取った。

『郷土の昔話・姫様と船幽霊』

内容は信心深い長者の姫様が風の神様に攫われ、海の神の使いに助けられた、というもの。

注釈には風の神とは、竜巻のことであり、海の神の使いである『船幽霊』は、ウミヘビの化身であろうと書かれている。

そこに描かれた、横縞模様のウミヘビの絵を見ながら、

「もしかして、このウミヘビって、俺のことかよ。」

伸也は笑いながら、同じ横縞模様である、ボーダー柄のTシャツを見返すのだった…。



『ヨットと会社員』終。
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