先生

私達は教室から出て、ゆっくりと校門まで歩いた。

久しぶりにお母さんと歩く学校。

確か、入学式以来かな。

風が心地よくて、歩いていても苦にならない。

一時はどうなる事かと思ったお母さんの入院も、その後行った検査結果に異常は見られず、すぐに退院出来た。

「無理しないでよ!!」

そう念を押して、お母さんは今でも以前の仕事を続けている。

「良い先生に出逢ったわね」

笑顔で言うお母さんに、『うん』と頷いた。


「早く孫の顔見せるから、お母さんも元気で居てくれなきゃ困るからね」


「そうね」

と、空を見上げながら笑ったお母さん。

「約束」

そう言って、私は小指を差し出した。

お母さんも小指を絡めてきて、私達は女同士の約束を交わしたんだ。

久しぶりに触れたお母さんの手は、温かくて子供の頃を思い出させる。

私達は小指を繋いだまま、家路についた。

青く澄んだ空が、私達を包み込んでいる様だった。

< 398 / 444 >

この作品をシェア

pagetop