Love Step
「雪哉さん、最終選考のネイリスト5名の資料です 今日の面接は1時からですから忘れないでくださいね?」


めぐみが机の上に履歴書の入ったファイルを置きながら言う。


「クスッ もちろん忘れていないよ?でも、めぐみがいてくれないとうちはうまく回らないな」


めぐみの言い方が面白かったのか、雪哉がクスッと笑い珍しくめぐみをおだてる言葉を言う。


「……雪哉さん、何を言っているんですか……そんなきれいな顔で笑いながら褒めないでくれますか?」


いつも見慣れている美形だけど、時々からかうような言葉を吐かれ笑いかけられると恋心が無くてもドキドキしてしまう。


めぐみは手でパタパタと自分の顔を仰ぐ。


めぐみの動揺も気にせずに雪哉はファイルを開き、ざっと一人一人の履歴書に目を通していく。


「この人、すごい経歴の持ち主だね?」


「え?」


ファイルを覗き込み名前を見ると「あ~」とめぐみは頷いた。


「海外での経験が他の人より、素晴らしかったので締め切りを過ぎていたんですが入れてみました」


雪哉のサロンとあって、ネイリスト募集の応募人数は100人を越えた。


「そう 海外経験が顧客に気に入られるかどうか分からないけど、彼女のデザインは繊細かつ大胆で美しいね」


履歴書と共に自分たちがデザインしたものも応募時に提出されている。


黒田 琴美(くろだ ことみ) 28歳 23歳から27歳までパリに在住。有名ネイルサロンで2年間主任。コンテストで最優秀賞。


こんなすごい経歴の持ち主がなぜ俺の店に応募する?自分で店を出した方が自由になるだろうに……。


雪哉は経歴を見て不思議に思ったが、実際に会って話をしてみると人柄も良く、落ち着いた感じが好印象を与えた。


最終選考に残った5人全員を面接した雪哉は黒田 琴美に決定した。




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