Love Step
今日の夕食が入らなくなった事を言う為に雪哉はオフィスを出た。


広い店の中を見渡せば、カリスマ美容師 雪哉が現れて、にわかに店内がざわめいた。


このヘアーサロンに足を運ぶのはほとんどが雪哉目当てのお客様だ。


いつ姿を現すか、お客様はいつも期待している。


いないな……。


お客様が騒がしくなったのも気にせずに、ぐるっと見渡すと受付の方へ移動した。


「遼平、杏梨 見なかった?」


受付でちょうど接客が終わった遼平に雪哉は尋ねた。


「杏梨ちゃんならネイルサロンにいると思いますよ 先ほどお客様がお帰りになったので」


「サンキュウ」


雪哉はネイルサロンに足を運んだ。


思いのほか杏梨はネイルサロンの雑用を気に入っているらしい。

きれいに爪を手入れされたその夜はずっと爪を見てウキウキしていたな。


杏梨がこの仕事を気に入ったのなら勉強させるのも良いと考えた。


ほぼ女性相手の仕事だから杏梨にとってやりやすい仕事なのかもしれない。


ネイルサロンのドアが少し開いていて中から話し声が聞こえてきた。



「可愛いから彼氏いるんでしょ?」


「……いいえ」


少し間が開いて杏梨の声が聞こえた。


「本当に?若いからこれからよね~」



黒田さんの言葉に戸惑っている杏梨が目に浮かぶ。



雪哉は笑いを堪えてドアを軽くノックしてから中へ入った。




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