Love Step
美味しかったよと言うと彩が嬉しそうに微笑んだ。


「良かった♪また作りますから食べたい物を言ってくださいね?」


食べたい物を聞かれて困った時、店員が良く冷えたビールと小鉢に入った和え物を持ってきた。


そして店員が出て行くと雪哉は「喉が渇いたね 飲もうか」と言った。


2人はグラスを軽く合わせた。


雪哉は半分ほどグイッとビールを煽ったが、彩は一口だけ口にすると見惚れたように雪哉を見た。


「あ!杏梨ちゃんの好きな物も言ってくださいね?」


また話が蒸し返されて雪哉は心を決めた。


「……彩、もう作らないで良いよ」


「えっ?」


彩は耳を疑い聞き返す。


「俺なんかじゃなく、彼氏に作ってあげて」


「ど、どうして……そんな事を言うんですか……?私は雪哉さんが好きなのに」


大きく見開いた目がショックを物語っている。


「ごめん」


「謝らないで下さいっ!私じゃダメなんですか?どうしてっ!?」


唇が震える。


目も潤み始めてテーブルを濡らした。


「泣かないで 誤解させていたのなら謝るよ 彩の気持ちには応えられない 俺には昔から大事に思っている子がいるから」


グレート黒の格子柄のハンカチを彩の目の前に差し出す。


「……大事な子って……杏梨ちゃんですか……?」



大事な人ではなく、大事な子……それは年下を示す場合に使う言葉。


「……あぁ そうだよ 俺は昔から杏梨を愛していた」


「彼女を愛していたのに女性と付き合っていたじゃないですか、私とも付き合って―」


雪哉の目が冷たくなった事に気づき、言葉を止めた。


「男の生理的欲求を解消しただけだ お互い合意の元にね」


その言葉に彩の顔が歪む。


「じゃあ……もう女性が必要じゃなくなった……?彼女とそういう仲なんですか?10才も年下なのに」


嫌だわ、私の醜い部分が出てしまう……。


彩は震える下唇を噛んだ。



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