Love Step
カフェを出た2人は駅に向かっていた。



杏梨が地下鉄の階段を降りようとすると、琴美に腕を掴まれる。



「杏梨ちゃん、あの駅だったらJRの方が近いわ」



「あ、そうだったんですか、わたし詳しくなくて」



最近まで1人で電車に乗れなかった杏梨は外出に慣れていない。



「駅は向こう側だから歩道橋を渡って行きましょう」



少し先の大きな歩道橋を指差す。



「はいっ」




歩道橋の階段を登る時、ドレスに気を使った。



丈が長いので裾を持ち上げ階段に触れないように上がる。



それに慣れていない5cmのヒール。



歩くたびに足元がグラッと揺れそうになる。



「大丈夫?」



「……大丈夫です でもまだわたしにはこの5cmのヒールは早かったみたいです」



苦笑いを浮かべた。



はぁ~ やっと登れた。



ホッと肩を撫で下ろす。



下りのことなど、まったく考えていない杏梨だった。



「琴美さん、ドレスが汚れていないか見てくれますか?」



ドレスの裾を見ながら琴美に言うが返事はなかった。



顔を上げて琴美を見る。



琴美は誰かを探すかのように歩道橋から下をのぞいていた。



「琴美さん?」



「え?な、何かしら?」



「誰かと待ち合わせですか?」



気もそぞろな琴美を見て杏梨は思った事を聞いた。



「え?いいえ まっすぐ家に帰るだけよ?一人寂しくね それより何だったかしら?」



「あ、ドレス、汚れていないか見てもらっても良いですか?」



「見てみるわね?」


琴美は杏梨の後ろに回るとドレスの裾を見始めた。


「ええ、大丈夫よ」


「良かった~♪」


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